DESIGN REMARKS [デザインリマークス]

デザインの良し悪しを“感想”で計ってはいけない理由

そのデザインが良いデザインかどうか、何をもって計っていますか?

先輩や上司の判断やクライアントの決定、お客様アンケート、友達に見せたときの反応、先生からの評価、あるいは教科書に書かれたルールに則っているかどうか。色々な物差しがあると思います。

これらのどれも間違った物差しではないと思います。もともとデザインは判断基準が曖昧なものだからです。

しかし今回は、こうした人の感想や感覚で良し悪しを判断するべきではなく、“数値”で判断することが有効であるというお話をさせて頂きます。

数値で判断することを重視できれば、人それぞれの好き好みなどで揺れ動くことが減り、明確な基準でデザインを作り、決定していくことができるでしょう。

数値で計るとはどういうことか

まず、デザインの良し悪しを数値で計るとはどういうことかを考えていきます。

簡潔に言うと、そのデザインの目的に対しての結果を数値化することになります。

例えばWEBサイトの場合、目的は「商品の購入」「サービスの予約」「お問い合わせ」「SNSやメルマガの登録」などが挙げられます。単純にその件数で計測することができます。
他にも、アクセス数やサイトの滞在時間、スクロールしてページのどこまで見たか、ボタンのクリック数など、色々と数値化することができます。
WEBサイトの場合には、このような計測をするツールが豊富ですから、数値化との相性はとても良いです。

しかし、WEBデザイン以外でも、もちろん数値化して見ていくことができます。

被験者を用いた検証で数値を計る

他にもどのような方法で数値化することができるか考えてみます。
例えば、パッケージデザインなどの商品デザインでも同じように数値で計ることができます。

先ほどのWEBサイトのように、売り上げで計ることもできますが、それではリリースしてからの判断しかできないことになります。実際のリリース後の数値を貯めていくことも重要ですが、リリース前の検証の方法が肝心です。

作ったパッケージデザインを誰かに見せて、「どうですか?」と聞き、感想をもらったところで、良い参考となる結果は得られません。

このような場合には、実際の店舗と同じ商品棚と商品を用意し、その中に新しいデザインを混ぜて何人かに選んでもらうのです。
こうすることで、“何人が商品を選んだ”という数値を得ることができます。

他にも、例えばシステムやアプリケーションのデザインをしたのなら、「これを使って◯◯をしてください」という実験をします。
すると、その操作を完了するまでの時間が計測できますし、どの時点で操作が迷うかも測れます。

このようにきちんと検証することで、個人的な感覚による判断から脱却できそうですね。

感想や個人的感覚はあてにならない

これらを考えると、なぜデザインの良し悪しを感想や個人的感覚で判断するのが良くないのか判ると思います。

感想と個人的感覚にはこのような要素が含まれます。

色々な要素があって個人的感覚による判定がくだされます。これらが悪い訳ではなく、デザインの対象は身近な1人2人ではないため、これだけで判断するのが良くないのです。

どんなに客観的で公平な目線を持っていると自信がある人でも、幾千もの人々の個人的感覚の平均値を読み取れる人は居るのでしょうか?

「どうですか?」と誰か数人に会話の中で聞くのではなく、数値化できる質問や実験で、できるだけ多くの人から結果を検証するのが重要なことになります。

最も良くないのは個人的感覚だけを信じ結果を見ないこと

とはいえ、何でもかんでも実験して検証してからリリースするなんて不可能だと思います。そんな時間はありませんし、誰もデザインを決定できなくなってしまうからです。

多くの場合、最終的には誰かが個人的感覚を含めてデザインの決定をします。経験豊富で、これだけの判断や決定ができる人はもちろん居ます。

また、アートに近い作品の場合には、むしろ制作者の個人的感覚にこそ価値があるため、100%個人的感覚でいいと思います。

ただ、デザインである場合、制作者やその身内だけで考えてリリースし、その後の結果や数値を見ないでいると、完全に自己満足になってしまいます。

感想も重要なことではある

ここまで語って最後に覆すようですが、感想も非常に重要で、依頼してくれた人が満足して喜んでくれたのであれば、まずはそれで良いという考えもあります。

その満足の中に、人間関係的要素などがあっても、それも含めてデザイナーの仕事だと思います。

そこから先、本当に利益を生むデザインを作るためには、数値での計測が必要になってくるものだと思います。

数値による計測・評価には、感想や感覚以上に、人間の深層心理が現れる本当の結果であるはずです。なぜなら、それが無意識のうちに実際に行動した内容だからです。

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