DESIGN REMARKS [デザインリマークス]

デザイナーの経済的価値が判りづらい原因

日頃からデザインの世界で生きていると、デザインやデザイナーの価値が正確に評価されていないと感じることが多くあります。

これは、全体的に低く見積もられているということではなく、過大評価も過小評価も含めて、デザインやデザイナーの経済的な価値が判りづらいという話になります。

今回は、デザインの経済的な価値がなぜ判りづらいのかを分析していきます。

デザインの価値は数値化しにくい

性能や価値を数値化できるものは判りやすいです。例えば、テレビや冷蔵庫の家電製品のスペックで、〇〇インチ、消費電力〇〇W、容量〇〇リットル、と言われれば数値でその製品の価値が理解できます。

しかし、この冷蔵庫は有名なデザイナーがデザインした物だから価格が高いと言われても、そのデザイナーのファンでもない限り、確かにかっこいいが同じ性能の冷蔵庫より5万も高いというのは納得できないでしょう。

もちろん、デザイン性を重視していて、そのデザインを確かに気に入ったなら5万の価値を納得する人もいるでしょうが、これは次の項目でお話します。

人によってデザインの評価が異なる

デザインは全ての人と密接な関係にあり、デザイナーだけのものではありません。服もスマホケースも文房具もどれもデザインで、誰もが好きなものを選ぶことができます。

デザイナーは、その好き好みの最大公約数的なポイントを、ターゲットを絞って狙いすましたデザインを作る、と言えばその通りです。

しかし、実際にデザインの制作や決定の場面では、結局「私はこう思う」という個人的な好き好みで意見が割れてしまいますし、結局、声の最も大きな人の意見に決まるということも少なくはないでしょう。

デザインほど、誰でも意見を言いやすく、判断が変わりやすいものは無いのではないでしょうか。それを手掛けるデザイナーは非常に曖昧な評価基準の中にいると言えます。

出来ばえのブレが大きい

機械が工場で物を生産するのに、その出来ばえにブレはありません。料理人が料理を作るのに、毎回どれだけの出来ばえのブレがあるでしょうか。

このように、その仕事の出来ばえのブレを考えると、デザイナーの仕事は非常にブレが大きい方だと思います。ジャンルによる得意不得意もありますし、仕事の相手や流れ、条件なども毎回違いますから、それによる出来ばえの変化もあります。

毎回同じ条件で同じようなものを繰り返し作っているわけではなく、どちらかというと、毎回新しいものを作り出すのがデザイナーであり、デザインです。

こうなると、トータルで見たときに7割は良いものを作っていたとしても、残り3割のお客様からすると、評価できるデザインではなくなってしまいます。

ゆえにデザイナーはよくわからない存在になってしまう

これらのことが、デザインというものは全ての人に密接な関係でありながら、デザイナーという職業や仕事の価値が不明確になる要因なのではないでしょうか。

デザイナーというのは、何かよくわからないことを考え、よくわからないことをしている人たち、だと思われ、とあえず適当に職人扱いしてあしらっておく、ということも少なくはないでしょう。

それに加え、最近ではデザインを作るツールも一般化し、プロの技術を趣味として学び、表面的にはそれなりに作れてしまうこともあるのではないでしょうか。こうしたことも、デザイナーの価値を揺るがす要因となります。

こうしたことは、デザインやデザイナーが正しく評価されている環境においては問題はないのですが、そうでない場合、やはり言葉を使ってその価値を示すことが大切になってきます。

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