UXリサーチ超入門 ― インタビューとテストで得られる本当の気づき

はじめに

「ユーザーのためにデザインする」とは誰もが口にしますが、実際にユーザーを理解せずにデザインしてしまうことは珍しくありません。
「多分こうだろう」という思い込みで機能を作り込んでも、リリース後に使われなければ意味がありません。

そこで重要になるのが UXリサーチ です。
UXリサーチは、ユーザーの行動や感情を理解し、デザインに生かすための調査プロセス。とくに「インタビュー」と「ユーザーテスト」はリサーチの基本中の基本です。

本記事では、UXリサーチをはじめたい方に向けて、インタビューとテストの基本と実践のポイントを解説します。

UXリサーチとは？

UXリサーチ（User Experience Research）は、ユーザーが製品やサービスをどのように捉え、利用しているかを調べる活動です。

• 何を目的に利用しているのか
• どんな課題や不満を抱えているのか
• 実際の利用状況はどうか

こうした情報を収集・分析することで、デザイナーは「本当に価値のある体験」を設計できます。

なぜUXリサーチが必要なのか

1. 思い込みを避ける

デザイナーや開発者はサービスに詳しすぎるため、ユーザーの視点を失いやすいものです。リサーチを通じて思い込みを排除し、現実に基づいた判断ができます。

2. ユーザーの本当の課題を知る

ユーザーは必ずしも自分の課題を言語化できるとは限りません。リサーチを行うことで「潜在的な課題」や「不満に感じている瞬間」を発見できます。

3. 改善の優先順位を決めやすい

定量的なデータだけではわからない「なぜその行動を取ったのか」を理解することで、改善施策の方向性が明確になります。

UXリサーチの基本手法

UXリサーチにはさまざまな手法がありますが、超入門としてまず押さえるべきは インタビュー と ユーザーテスト です。

ユーザーインタビュー

目的

ユーザーの背景、動機、行動の理由を深く理解すること。

流れ

1. 目的を決める
   • 例：「新規ユーザーが会員登録をためらう理由を知りたい」
2. 対象者を募集する
   • 想定ユーザー像（ペルソナ）に近い人を探す
3. 質問ガイドを用意する
   • 「普段どのようにアプリを使っていますか？」
   • 「最後に困ったことは何でしたか？」
4. インタビューを実施
   • 対面またはオンラインで30〜60分
   • 相手の発言を遮らず、深掘りする
5. 記録と分析
   • 録音やメモをもとに共通パターンを抽出する

ポイント

• 「はい／いいえ」で終わる質問を避け、オープンクエスチョンを使う
• 表面的な答えの背後にある「なぜ？」を掘り下げる
• 無理に誘導せず、ユーザーの言葉をそのまま受け止める

ユーザーテスト

目的

プロトタイプや既存サービスを実際に触ってもらい、操作中の行動や課題を観察すること。

流れ

1. テストの目標を決める
   • 例：「商品検索から購入まで迷わず進めるかを確認する」
2. シナリオを作る
   • 「友人への誕生日プレゼントを探して購入してください」など
3. 参加者に操作してもらう
   • 実際のデバイスで触ってもらい、画面録画や行動を記録する
4. 観察と質問
   • 「この画面で次にどうしますか？」など声を出しながら進めてもらう
5. 結果を整理する
   • 迷った箇所、戻った箇所、ストレスを感じた場面を抽出する

ポイント

• テストは少人数（5人程度）でも十分効果的
• 完成品ではなく、ワイヤーフレームや簡単なプロトタイプでもOK
• 観察者は複数人いると偏りが少なくなる

インタビューとユーザーテストの違い

• インタビュー：ユーザーの考えや感情を言葉で理解する
• ユーザーテスト：実際の操作行動を観察し、体験を理解する

両者を組み合わせることで、「言葉」と「行動」の両面からUXを把握できます。

実務でリサーチを活かすポイント

1. 完璧を目指さず小さく始める

「ユーザーインタビューを数十人やらないと意味がない」と考える必要はありません。まずは少人数で試すことが大切です。

2. デザイナー以外も参加する

PMやエンジニア、マーケターなども観察に加わると、チーム全体でユーザー理解が進みます。

3. 仮説を立ててから臨む

「なぜ離脱が多いのか？」という仮説を持ってリサーチすると、観察ポイントが明確になります。

4. リサーチ結果を共有しやすい形にまとめる

• ユーザーの発言を引用する
• 課題点を箇条書きにする
• 動画の短い切り抜きをチームで視聴する

共有の仕方によって、組織全体の学びに変わります。

まとめ

UXリサーチは、ユーザーを深く理解し、体験をより良くするための基本プロセスです。

• インタビューでは「なぜ？」を掘り下げる
• ユーザーテストでは「実際の行動」を観察する
• 小さく始め、チームで学びを共有する

こうした活動を積み重ねることで、ユーザーに寄り添ったデザインが生まれます。

デザインの答えはチームの中ではなく、常にユーザーの中にあります。インタビューとテストを通じて、その答えに耳を傾けてみましょう。