昨年2月の発売以来、自然科学・文芸評論・ノンフィクションなど幅広い分野で絶賛されている『銀河の片隅で科学夜話』が「第40回 寺田寅彦記念賞」を受賞しました。
寺田寅彦記念賞とは
寺田寅彦記念賞とは、高知県在住の個人・団体、出版社又は高知県出身者が発表した作品(印刷物)を対象とするもので、「①寺田寅彦に関係した作品」もしくは「②自然科学を対象とした研究・ 随筆」が対象となります。
「高知県にゆかりのある方による寺田寅彦に関する作品、自然科学を対象とした研究または随筆を対象」とするもので、文学的研究、地学・天文学、海洋学や環境生態学に関係した科学的研究および随筆、寅彦の遺品資料による研究や随想、肉親による追想といった作品がこれまでに受賞しています。
■寺田 寅彦
1878年‐1935年。東京生まれ(高知県出身)。熊本の五校で夏目漱石に英語を習う。東大物理学科を卒業し、ヨーロッパ留学後、東大教授。理化学研究所、東大地震研究所の研究員としても活躍。物理学者であり、俳人、随筆家。物理学者としては、初期にX線に関する研究を行い、学士院恩賜賞受賞。文学者としては主に随筆を執筆。
『銀河の片隅で科学夜話』の受賞理由
「ブラックホールから蟻、蝶、数理物理、倫理学まで多岐にわたる内容が全部で22話。それぞれ1話独立、15分ないし20分で読める長さになっていて、それぞれの話はウィットに富み、驚きがともなっています。家庭ですごす時間が多くなっている昨今、短時間の気分転換としても気軽に読むことができ、さらに読後もしばらく思索の世界に誘われるものと思われます。
自然科学だけでなく、最近の私たちが悩む、多様な構成員をもつ社会全体としての意思決定や、自動運転における責任の所在など、これからの社会のしくみにかかわる、いわゆる理系と文系が重なり合うような話にも引き込まれます。
話題の幅広さと、科学を背景とした語りの巧みさ、これは寺田寅彦の作品に通じると言ってよいでしょう。装丁も美しく、挿絵とあいまって、洗練された雰囲気を醸し出しています。自然科学を対象とした研究・随筆としてきわめて高く評価でき、若者たちにも勧めたい一冊です。」(大村誠選考委員長)
『銀河の片隅で科学夜話』の著者
■全卓樹(ぜん・たくじゅ)
京都生まれの東京育ち、米国ワシントンが第三の故郷。東京大学理学部物理学科卒、東京大学理学系大学院物理学専攻博士課程修了、博士論文は原子核反応の微視的理論についての研究。専攻は量子力学、数理物理学、社会物理学。量子グラフ理論本舗/新奇量子ホロノミ理論本家。ジョージア大、メリランド大、法政大等を経て、現在高知工科大学理論物理学教授。著書に『エキゾティックな量子――不可思議だけど意外に近しい量子のお話』(東京大学出版会)などがある。
歴代の受賞作品
令和2年度(第40回)~平成25年度(第33回)まで
■令和2年度(第40回)
『銀河の片隅で科学夜話』
■令和2年度(第40回) 特別賞
『牧野植物図鑑原図集』
■令和1年度(第39回)
『科学絵本 茶わんの湯』
■平成29年度(第37回)
シカ食害で痛む 三嶺の森 再生への途と課題
三嶺の森をまもるみんなの会のホームページにてPDFで読むことができます。
■平成28年度(第36回)
『生命(いのち)とは何か 宇宙における過渡的秩序体
■平成26年度(第34回)
『MAKINO』
■平成25年度(第33回)
『図説 土佐備長炭 21世紀に伝えたいこと』
※抜けている年は受賞作品が無い年度です。