イースト・プレスは2021年6月12日に『何者かになりたい』(熊代亨 著)を発売します。
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「自分」に満足できないのは、なぜ?
〈承認欲求〉〈所属欲求〉〈SNS〉〈受験・就職〉〈恋愛・結婚〉〈地方・東京〉〈親子関係〉〈老い〉
アイデンティティに悩める私たちの人生、その傾向と対策。
「はじめに」より
自分とは、いったい何者なのでしょうか。
小さな子どもは自分が一体何者なのか、自分とはどういう人間なのかを深く考えることがありません。自分が何者なのかを知らなくても困らないまま、小さな子どもはそのままでいられます。
ところが成長し、思春期を迎える頃にもなると、私たちは自分についてあれこれ考えはじめます。自分はこんな風になりたい……なりたい自分になれていない……こんなことを考える動物は、思春期以降の人間をおいてほかにありません。この本を手にするあなたも、「自分は何者なのか」「自分は何者になれるのか」考えたり悩んだりするのではないでしょうか。
それともあなたは、名声や地位を確立した人と自分自身を見比べて「自分はまだ何者でもない」と落胆したり、「自分は何者にもなれそうにない」と焦っていたりするかもしれません。そうした落胆や焦りは思春期特有のものではなく、時には中年の男女がそう思うこともあります。
どうして私たちは自分についてこんなに考えてしまうのでしょう?
どうして私たちは「何者かになりたい」と願い、「何者にもなれない」と悩むのでしょう?
この本では、こうした願い・悩みを「何者問題」と呼び、その分析と解決策の考案を行っていきたいと思います。
この何者問題については、20世紀の心理学者や精神科医の先達がさまざまなヒントを書いています。たとえば私が自分について考えずにいられなかった頃、小此木啓吾という精神科医が書いた『モラトリアム人間の時代』という本を読み、自分の成長戦略のヒントにさせてもらいました。この『モラトリアム人間の時代』は優れた解説書ですが、出版されたのが1978年と古く、さすがに今の時代には合わない部分も出てきています。また、全体的に文章が硬く感じられ、読みにくいと感じる人もいらっしゃるかもしれません。
そこで私は、2020年代にふさわしい内容と文体の何者問題についての本をつくろうと考えました。バブル景気が崩壊する前と後や、スマホやSNSが当たり前になる前と後では、私たちのコミュニケーションも、社会状況もかなり違っています。それに伴って、「何者かになりたい」ときに頼るべき手段も、「何者にもなれない」と悩んでいる人が注意しなければならないことも、変わってきていると私は見ています。
本書の目次
- はじめに
- 第1章 承認されると「何者か」になれる?
- 第2章 つながりが「何者か」にしてくれる?
- 第3章 アイデンティティと何者問題
- 第4章 恋愛・結婚と何者問題
- 第5章 子ども時代の何者問題
- 第6章 大人になってからの何者問題
- 補論 何者問題への処方箋
- おわりに
著者プロフィール・その他の著書
熊代亨(くましろ・とおる)
1975年生まれ。信州大学医学部卒業。精神科医。
ブログ『シロクマの屑籠』にて現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信し続けている。
著書に『ロスジェネ心理学』『融解するオタク・サブカル・ヤンキー』(ともに花伝社)、『「若作りうつ」社会』(講談社現代新書)、『認められたい』(ヴィレッジブックス)、『「若者」をやめて、「大人」を始める』『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』(イースト・プレス)がある。